原題:Le otto mongagne
著者:パオロ・コニェッテイ (Paolo Cognetti)
訳者:関口英子
2018年10月2日発行
新潮社
映画館で手に取ったチラシを読むと、原作小説の映画化と書いてあったので、
急いで図書館から借りてきた。
本の裏表紙には「町の少年と山の少年 二人の人生があの山で再び交錯する」とあるけれど、まさにその通りで付け加えることはない。主人公は作者の分身とも思える街の少年ピエトロ。山の少年でピエトロの人生の折々に再開する山の少年はブルーノ。
上手くいかない父親との関係、超然としているように見える親友。その合間に起こる山登りがうまく盛り込まれているのは、よくある青春小説の定番のようだ。
そんな、どこかで読んだことがありそうな話なのに、飽きることなくそして、この小説の世界にすっぽりと入り込んでしまうのは、文章それ自体の清潔さのせいかもしれない。原文は当然のことながら読めないので、きっと原文の良さを十二分に翻訳して下さる訳者のおかげとも言える。
行ったことはないけれど、イタリア・アルプスの険しい山や、そこでの暮らし。美しくて厳しい自然をありのまま受け入れながら、泰然自若とした態度で暮らしている友がいるだけで、羅針盤が行くべき方向を指し示すような安心感がある。絶対的な信頼感かもしれない。そういった心の動きが、奇をてらわない誠実な描写に乗って物語となって
形作られていると思う。
最近は真面目に読書をしていなかったので、あまり大部ではないにしても、最後まで読み通せるかいささか心配だった。自分なりに読み通せたことで、読書体力がまだあるとわかったし、なにより読み進むにつれ主人公の世界が目の前に広がっていく経験ができたのが良かった・
映画は5月末か6月くらいに公開予定なので、今から非常に楽しみにしている。