うたたね図書館

散らかった好奇心を集める場所

『エキゾチック・パリ案内』読了

www.heibonsha.co.jp

著者:清岡智比古

出版社:平凡社

発行年:2012年11月15日 初版第一刷

 

 大部で重厚なミステリーを読んだあとに、何か軽く楽しく読めそうなものが欲しくて図書館で発見。

 タイトル通り、パリの案内書ではあるけれど、頭に「エキゾチック」とついているのがポイント。いわゆる観光案内にはあまり載っていない(と思われる)地域を、大きくユダヤ系、アラブ系、アフリカ系、アジア系で章立てし、映画・音楽・食事を切り口にそれぞれを紹介していて、どのページをめくっても興味深かったです。

 音楽に疎い私は、ティケン・ジャー・ファコリーという名前をこの本で初めて知り、紹介されいていた「パリのアフリカ人」を聞いてみました。これってスティングの「イングリッシュマン・イン・ニュー・ヨーク」のフランス語版カバーなんですね。そのフランス語版の歌詞を著者が日本語にしてくださっていて、ちょっと泣けてきます。

youtu.be

 紹介されている映画もちょっとひねりが多く、作中の場所一つをとっても、歴史や性格までは分からなかったので、それを思い出しながら読むと、今度はあれこれ調べたくなります。「イブラヒムおじさんとコーランの花束」はもう一度観なくては。「チャオパンタン」は見逃したままになっているので、これも必見かと。

 優しい筆致で進んでいく本書ですが、そこかしこにちょっとした引っ掛かりがあって、「もう少し書いてくれたらいいのに」と思うところもありました。でもきっとそこが仕掛けなんだと思います。そこから先は、自分で確かめに行ったり、もっと資料を探したりしてみましょうという、お誘いなのだと思います。

 近々公開される「バティモン5」が気になっているので、充実した巻末の参考文献を手掛かりに、あれこれ探してみようかなと思っているところです。それから、アジア人街に出てきた「留仏勤工倹学」。アメリカに渡った中国人の事は少しは知識としてしっていましたが、フランスにも大量に送り出していたということに驚きです。周恩来や鄧小平がフランス留学経験があるとは知っていましたが、その背景についての説明を読むにつれ、興味は深まるという仕掛けです。

 パリについての本ですが、例えば「悪なき殺人」といった映画の背景理解にも役立つと思いますし、できれば続編というか、ヴァージョンアップしたものを読みたいと思います。